和歌山市立 加太中学校

加太の新聞記事【 3月 7日(月)】

 朝日新聞の和歌山版に連載されています『加太まちダイアリー』が、昨日掲載されていましたので紹介いたします。東大の青木先生が加太の魅力を和歌山県内に発信してくれています。2年以上に渡り、毎月の掲載です。今後も内容を変えて連載が続くということで安心いたしました。また、加太中学校の話題も取り上げてくれるかもしれませんね。

「ヨソモノ」視点で価値を知る

最近読んだ本の中で、カリフォルニア大学のユニークな実験が紹介されていました。観光ボートの乗客を撮影し、観光後に写真を販売するという実験です。

定価は15ドルと伝えた上で、「15ドル」「5ドル」「購入者の好きな値段」の3パターンで販売してみます。すると当然一番安い5ドルで売ったときの購入者が64%と最も多く、15ドルのときは23%だったそうですが、好きな値段のときに買った人も55%にのぼりました。いくらでも安く買えるにもかかわらず、平均購入額は6・4ドルだったそうです。

この実験から分かる通り、さまざまな理由から、人には一定の価値に対してきちんと対価を支払いたいと思う心理が働くようです。「ご自由にお取りください」と書いて置いてあるものより、それなりの値札がついた物の方が欲しい気持ちになることもあります。

しかしそもそも、モノに対して価値をつけるのは簡単なことではありません。そこに価値があることにすら気づかない場合もあります。まちづくりの場面ではよく「地域資源の発掘」という言葉が登場しますが、地域内の人にとっての資源の価値と、地域外の人にとってのそれは異なるといったことも往々にしてあります。

まちづくりに関わる研究者やコンサルタントなどのいわゆる「ヨソモノ」と言われる人たちの役割の一つに、この地域内外の価値認識のズレの見極めがあるでしょう。地域内ではなんとも思われていないものが、地域外の人にとってはとても面白い、というのはよくあることです。

住民にとっては車の通れない狭くて不便な道が、ヨソの人からすればヒューマンスケールの魅力的な路地に見えます。なんの変哲もないようにも見える漁港も、外の人からすれば美しい風景です。これらは地域の「らしさ」を形成する重要な要素であり、「これは面白いんですよ」と外の人に言われて初めてそうかもなぁと気づくことも少なくありません。

ヨソモノ視点の理解は自分たちの地域の特徴を知ることでもあり、このズレに対して上手に価値づけできれば、経済活動にもつながっていくでしょう。

2019年11月から、ほぼ毎月連載させていただいたこのコラムは、私の加太での活動を通して得たことを研究者でありヨソモノの立場から紹介してきました。

次回からは、タイトルはそのままに、加太での体験を生活者視点でなぞるエッセー風に装いを新たにします。私自身、現在は東京で暮らしていますが、約3年間の漁村暮らしを振り返ると、都市とは異なるコミュニティー性や常識、習慣などにあらためて気づかされます。漁村では当たり前だった暮らしの面白さやユニークさを、一生活者の視点でお伝えしたいと思います。引き続き、加太や和歌山に思いをはせつつローカルの魅力を共有できれば幸いです。

(青木佳子・東京大生産技術研究所 博士研究員)

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