和歌山市立 太田小学校

教員研修

現職教育・研究会

   国語科教育

(1)研究テーマ

        生き生きと取り組み、豊かな心を育む国語教育

            ー 伝え合う活動を大切にして ー

(2)研究テーマの設定にあたって

① はじめに(研究の歩み)

本校の研究は,昭和60年度より「豊かな人間性を育てるために」という願いから,国語科・算数科・道徳を中心とした研究を11年間続けてきた。国語科・算数科では,基礎的・基本的な力を確かに身につけ,それらを活用できるように,また道徳では,人間として豊かな心の持ち主にと願ってのことである。

平成8年度からは研究の中心を国語科教育に絞り,特に文学教材において「豊かに読み取る力」の育成を目指した指導のあり方を模索してきた。子ども一人一人がイメージ豊かに読み取るために,書かれている語句に着目させ,音読や読み取り図の作成等,指導法の工夫を行ってきた。

読み取る力だけにとらわれず,子ども一人一人が楽しく生き生きと学習する中で,積極的に自らの思いや考えを出し合い深め合う学習を展開し、心の豊かな子どもに育ってほしいと願い、研究テーマを今年度は、「生き生きと取り組み、豊かな心を育む国語学習」とした。文学教材に偏った指導ではなく、説明文・詩等さまざまな教材・単元の学習を通して「豊かな心を育む」ためにどうすればよいか等、学習のあり方を探っていくこととが必要かつ重要であると考える。 毎年研究を積み重ねていくなかで,「自分の考えをもち文章に表すことはできるが,その思いや考えをみんなの中に出したり,意見を交換し合ったりすることは苦手である。」という児童の実態に立ち,研究テーマにサブテーマ -伝え合う活動を大切にして- を加え,伝え合う力が育つような学習活動の研究に取り組んできた。

そこで,研究テーマ実現のために,

① 単元研究の充実(単元を貫く言語活動)

② 個に応じた指導の工夫

③ 指導と評価の一体化

という3つの視点を掲げ,研究が焦点化できるようにも努めてきた。

教材に出会ったとき、子ども一人一人が抱くであろう興味・関心を大切にし,主体的に取り組み,豊かに読み味わい,読み広げていく学習を進めていきたい。楽しく学習を進めていく中で得た力は,きっと他の学習でも,また毎日の生活の中でも生きてはたらく力となるであろう。以上のような願いや考えのもと,今年度から、新たに本研究テーマにたち研究を進めることとした。

② 研究テーマについて

◆生き生きと取り組むとは

「生き生きと取り組む」とは,子ども自身が学習を楽しいと感じ、進んで学習に取り組むことである。つまり、子ども自らが学習主体であることを認識し、主体的に学習を進めることである。

他者からの指示や命令によってではなく、自らの意志で学習していると実感することが、学習 を楽しいものと感じ、ひいては学習効果にも大いにプラスになる。そのことは、これまでの多くの研究からも明らかである。そこで、私たちは研究テーマとして、「生き生きと取り組む」を取り上げた。

子どもたちが生き生きと学習に取り組む姿勢は、はっきりとした目的や見通しをもち、そのことを追求していくこと、その過程で自分たちが主体で進めていると感じられること、追求している事柄が解明できたときの達成感等にあると考える。それゆえ、はっきりとした目的意識をもち学習を進めていけるような単元計画を立てることを心がけることが大切である。

さらに、「生き生きと取り組む」ための指導者側の留意点として、以下の5点を考えている。

・目的や相手意識をもたせるようにする。

・発達段階に応じて子どもたちの思思いを活かす。

・子どもたちの言語活動を教材化し、学習材として活用する。

・伝え合う場面や方法を選択する機会を重視する。

・自己評価・相互評価を重視し、評価意識を高める。

◆ 豊かな心を育む国語学習とは

国語科学習における豊かな心とは、物語の主題や筆者の考えに触れることにより自分の考えを広めたり深めたりできること。また、様々な価値観があることを知ったり、友だちの色々な考えを受け入れ、自分と違う考えや見方を取り入れることができることであると考えている。

本校の児童は,文章の内容や要旨などをにつかめているにもかかわらず,読み取ったことを自分の意見として表明したり,他と意見交換をすることで自らの考えをさらに深めたり広げたりすることが苦手な子が多いという実態がある。

そういう本校の子どもたちが、国語を学習することで豊かな心を育めるようにするためには、今後の生き方に影響を与えたり、指針になるような教材に触れさせることも大切なことであると考えている。

そこで,例えば、指導要領・内容(2)に(物語や詩、伝記などの創作や説明など多様な本や文章を読んで感想を述べ考えを表現したりする活動)言語活動を適切に取り入れた指導を行うことが、即ち、私たちが考える豊かな心を育む国語学習を展開することであると考え、研究を進めていくこととする。そのためにも、「ワークシートを活用した考えを書く活動の充実」、「考えを出し合い、深め合う話し合い活動の充実」をより一層図らなければならない。

今回の学習指導要領では、「読むこと」に関して、各学年に於ける目標は次の通りである。

第1学年及び第2学年
書かれている事柄の順序や場面の様子などに気付いたり、想像を広げたりしながら読む能力を身につけさせるとともに、楽しんで読書しようとする態度を育てる。

第3学年及び第4学年
目的に応じ、内容の中心をとらえたり段落相互の関係を考えたりしながら読む能力を身に付けさせるとともに、幅広く読書しようとする態度を育てる。

第5学年及び第6学年
目的に応じ、内容や趣旨をとらえながら読む能力を身に付けさせるとともに、読書を通して考えを広げたり深めたりしようとする態度を育てる。

③サブテーマ ー伝え合う活動を大切にー について

このテーマを設定するに至った要因の一つが,「文章の内容や要旨などをつかめているにもかかわらず,読み取ったことを自分の意見として表明したり,他と意見交換をすることで自らの考えをさらに深めたり広げたりすることが苦手な子が多い」という本校の児童の実態である。

読み取った内容についての自分の考えをまとめ文章化し,友達と話し合うことが,読みを一層深め,一人一人の感じ方の多様性に気づき、さらに自分自身の考えの広がりや深まりにつながる。また,主体的な学習を推進する意味においても,相手意識をもたせたり,伝え合う場面や方法を工夫することが大切である。 伝え合う活動とは,書く・読む・話す・聞くというような活動であろうが,伝え合うという以上,「表現→理解」という一つのサイクルで完結するものではなく,さらに,「表現→理解→表現→理解→・・」というスパイラルに繰り返されるような活動のことであろうと私たちは考えている。繰り返すことにより,より一層自他を尊重する態度が養われ,より鋭敏な言語感覚が培われ,より理論的な思考力を身につけることができるのではないだろうか。

(3)研究テーマ実現のために

①単元研究について

「生きる力につながる言語の教育」これが私たちの大前提である。このような大きな課題を追求していくためには,単元全体を通して子どもの変容を見つめていくような,単元研究に研究スタイルを変えていく必要がある。そして,そのような研究を行うためには,〈子どもの実態の把握→単元・単元目標の設定→詳細な単元指導計画→子どもの変容の分析・評価〉を全体像の指導案に盛り込む必要がある。

 そうした上で、単元を貫く言語活動を位置づけた国語科の授業スタイルに改善し、単元の指導目標の実現や子どもの主体的な思考・判断を伴う学びの実現をめざしていきたいと考えている。

②個に応じた指導の工夫

 子どもの個性を生かすためには,まず一人一人に対応する指導者の的確な見取りが必要となる。これが「子どもの実態の把握」であろう。指導者には単元の学習を通して常に子どもの姿に目を配り指導することが求められている。 同じ教材と出合っても,子ども一人一人のもつ興味や関心のレベル,課題の内容や方向が同一であるとは限らない。子どもの考えを最大限に生かすことが,学習を楽しいと感じ,生き生きと活動することにつながる。

 さらに,個に応じた学習指導を充実するためには,その多様性に対応できる指導者側のゆとり,多様な教材,多様な学習活動を準備することが大切であると思う。

また,個別学習を充実したものにするためには,それぞれの個別学習の成果を互いに交流し合う機会をもつべきである。 前もって自分の考えを持っておくこと、それぞれの考えを出し合い、自分の考えと友だちの考えのどこが違うか同じかを聞き分けること、さらに自分の考えとどう違うか、どう同じか、なぜか等を考えることにより、個別学習の充実が図られる。そして、それが、集団学習の中で個人のめあてや目的が達成されることにつながると考える。

具体的な方法としては,これまでも学習指導案に座席表を添付し,一人一人の姿が幾分かでも見えるようにと心がけてきた。また,単元の中においても個別学習・グループ学習・一斉学習等を組み合わせ「個に応じる指導のあり方」を探ってきた。今年度もそれらの取り組みを継続しつつ,研究主題に迫っていきたい。

③ 指導と評価の一体化

授業前の考えが授業によってどう深まったか、どう変わったかをワークシートに書くことによって子ども自身が自分の頑張りを評価できるようにする。また、自分自信の学習の足跡が残るようにする。

私たち指導者が学習指導計画をたてるとき,学習前の子どもの実態をどうとらえているかということが大切である。それをぬきにしては,指導目標を設定することも,指導計画を作成することもできない。また,学習中や学習後においては,目標の達成が十分であるかに常に心を配り,適切なチェックを行うことが重要である。 本校では単元研究を意識した時点から子どもの実態の把握→単元・単元目標の設定→詳細な単元指導計画→子どもの変容の分析・評価という一連の流れの中で,評価活動の重要性をとらえてきた。

先にも述べたように,本校では「指導と評価の一体化」を研究の視点として平成15年度から取り組んできている。研究授業においてはもちろん,平素の授業から評価の大切さを常に心に留めながら実践を重ねてきた。

その取り組みの中で,読み取ったことに自分の経験や思いを重ねる思考や自らの思いを表明する表現の分野で,子どもたちの力が十分に育っていないのではないかという反省が浮かんできた。 そこで本年度は,国語科の目標に照らした多くの観点の中で,思考・表現活動の評価に焦点を絞り研究を進めていきたいと考えている。具体的には,「書く」活動や「話し合う活動」を重視し充実を図ること,それに対応する評価規準を作成すること,個々の子どもの達成度を適切に判断すること,評価を基に指導計画を見直していくことなどがポイントになると考えられるが,細部については実践を通して深めていければと考えている。

④今年度の重点目標

1、本時のめあてをはっきりとさせる。

2、授業中に立ち止まり、考える場面を作る。

3、発表会ではなく、深める場という認識を持つ。

4、普段から意見を聞き合う場を多くつくり、自他の意見を比較する機会を設ける。

5、教材研究を重ねる。

6、何でも話せる温かい学級経営を目指す。

 平成26年度 現職教育年間計画

このページのトップに戻る