和歌山市立 湊小学校

研究主題

自ら問いかけ、考えを深める算数科学習 

 1、 主題設定の理由

本校では,一人一人が物事・事象に対して積極的に働きかけ,自らの見方・考え方に磨きをかけていこうとする子どもの育成を目指して研究を進めてきた。具体的には算数科の授業の中に問題解決学習を取り入れることにより,主体的に学習に取り組む子どもを育てることを中心に据え,研究を推進してきた。
学習指導要領の算数科の目標には「数量や図形についての算数的活動を通して,基礎的な知識と技能を身に付け,日常の事象について見通しをもち,筋道を立てて考える能力を育てるとともに,活動の楽しさや数理的な処理のよさに気づき,進んで生活に生かそうとする態度を育てる」と書かれている。ここに示されている能力や態度を育てるために,「自ら問いかけ,考えを深める算数科学習」を研究主題として設定した。子どもが主体となる問題解決学習を取り入れ,学習過程を「つかむ」「みつける」「確かめる」「まとめる」という4つの段階に分け、各段階における研究の視点を明確にしながら研究をしてきた。一つの課題に向かったとき,子どもたち一人一人が自分の考えを持ち,それを図や言葉などで表現する。そして,互いの考えを出し合い,よりよい解決を求めていくという主体的な問題解決学習を進めていくことが大切である。
平成16年度からは,単元を見通した課題設定と単元計画,評価のあり方に焦点をあて、研究を進めてきた。子どもたち自身が単元を見通しながら学習を進めていけるような単元計画のあり方を探っていくことで,単元を通して主体的に学習に取り組む子どもの姿により迫っていけると考えたからである。単元を通した指導計画表を作成することで,指導者自身もより具体的に単元の学習を見通すことができ,それぞれの時間における子どもたちの活動や考えが単元全体のどこに位置づいているかを把握しながら,次の学習へとつないでいくことができた。今年度も引き続き単元を見通した課題設定と単元計画について考えていく。と同時に,単元の目標に迫るための算数的活動にはどのようなものがあるのか,それを単元のどこに位置づけていくとよいのかを工夫しながら,研究を進めていきたい。また,その単元において学んだ基礎的な力の習熟,定着をどうはかっていくかについても考えていきたい。

2. めざす子ども像

学習時の子どもの姿について話し合い,実態をとらえる研修を重ねた結果,
・課題に対して,意欲的に取り組む子
・新しい課題にであった時,既習事項をいかせる子
・思考を要する問題等に進んで取り組む子
・算数的活動を通して具体的に考えたり,図や線分図を使って考えることができる子
・友達の発表を聞き,進んで発表しようとする子
・互いの考えを出し合い,より深まった考えをつくっていく子
等のめざす子ども像がだされた。

そこで,以下のような子どもの姿を求めたいと考えた。
◎低学年 具体的な操作活動等を通して自分なりに考えようとする子
◎中学年 自分の考えをもち,友達の考えと比べられる子
◎高学年 友達の考えと比べ,そのよさに気付き,自分の考えを深めていける子

3. 研究の視点
[1]学習過程の工夫
子どもが主体となるよう問題解決学習を取り入れ,学習過程の流れを「つかむ」「見つける」 「確かめる」「まとめる」の4段階に設定する。

(1) つ か む
ここで留意すべきことは課題の提示の仕方を工夫して意欲化を図り,既習事項を想起し
ながら, いろいろな条件に着目させ整理させることによって何を解決すべきかを捉えさせ
ることである。子ども一人一人がいきいきと学習に取り組む授業展開をしていくことが大
切だと考え,以下課題の条件を考えてみた。
①学習意欲を喚起できるもの
学習課題の中に児童の好奇心や探究心の涌くものが仕組まれており,自然と子どもの内に挑戦してみよう,調べてみよう,やってみようという意欲がもてるような要素がなくてはならない。このような課題を提示すれば「よし,やってみよう」「こんな方法でできるかもしれないぞ」と全力を傾けて取り組んでいくであろう。
②既習事項を手がかりに多様な操作活動や考え方ができるもの
子どもたちは具体物・半具体物で操作したり,絵や図などを使って解決を図ったり, 解
き方を確認したりすることが多い。既習事項を手がかりにしなが解決を考えることができ
ると同時に,さまざまな活動が可能であるような課題を与えることにより,どの子にも自力
解決をした喜びを味わわせることができるからである。
③数学的な考え方を育成できるもの
解決することを通して問題の中に潜んでいる中心的なものや解決に有効な数学的な考え      方のよさをわからせ,これを身につけさせる必要がある。このような学習をしてきた子ど      もは新しい課題にぶつかっても,身につけた数学的な考えを駆使して自分で解決しようと      するようになる。これが生きてはたらく力となっていくのである。
④目標の達成にふさわしい課題であるもの
題材の目標をふまえ,特に導入時では題材全体にかかわる目標を見通せるような課題が大切になってくる。そして,毎時間の課題はそれらの関連性や発展性を大切にするものでありたい。

(2) 見 つ け る
この段階では,子どもの追求を大切にすることである。子ども一人一人に,自分なりの考えを持たせるためには,考える時間を十分に与えることが大切である。そして,算数的活動
や一人一人の考えを書かせる活動を大事にし,問題解決に取り組ませたい。
算数的活動は,児童が目的意識を持って取り組む算数にかかわりのある様々な活動を意味しており,作業的・体験的な活動など手や身体を使った外的な活動を主とするものや,活動の意味を広くとらえれば,思考活動などの内的な活動を主とするものも含まれる。
子ども一人一人が自ら具体物等を操作して,「そうか」「わかったぞ」「できそうだ」と体全体で認識することが大切である。そのための活動が算数的活動であると考えられる。また,算数的活動は,子ども自身の学習の姿勢を受動から能動へと変えさせていくものと考える。実際にものを操作し考えていく中で,子どもは主体的に学習に参加していくといえる。
算数的活動を通して子どもが課題から問題解決していく過程というのは,人によってちがって当たり前である。その中にある子どもの思いを大切にしていきたいと考える。子どもは自分なりの見通しを持ち論じていく。そして,その子なりの筋道がそこに表されていくものである。ひとつの筋道が行き詰まったら,また,別の見通しで論じていく。このように,試行錯誤しながら課題と向き合う子どもの姿を大切にし,子どもの思い,思考の過程を書き表せるようなノートにさせていきたいと願っている。
ノートに自分の考えをしっかりと書くことによって,自分自身を振り返ったときにどのように考えを進めてきたかという自己認識することができる。また,自分の考えを友達にわかるように説明するために,相手にわかりやすい表現をすることが大切となってくる。
そうなっていくためには,低学年から解決の手順にそって,囲む(○),矢印(→),コメント,簡単な図等を取り入れられるようにする。
中学年では自分の思いを話すように図,言葉,式に書いていけるようにする。
高学年では思考の筋道がよく分かるように書くということを大切にしたい。

この段階では,指導者が子どもの考えを的確にとらえ,適切に指導していくことが大切である。また,中高学年になるにしたがい,一つの解決で止まらずに幾通りもの解決をするよ
うに指導していく。

(3) 確 か め る
ここでは自力解決してきた過程について筋道をたどって説明させる中で,自分と友達の解    決方法を比較して考え方の類似点や相違点を明らかにし,比較検討を加えながら,よりよい    解決を目指していくことが大切である。また,子ども一人一人の考えのよさや,その中にあ    る数学的な見方,考え方を大切にした話し合いが重要である。
そこでは,一人一人の子どもが,自分の持ち味を自覚し,友達からよさを学ぶことにより,集団全体が互いを伸ばす場として機能できるようにする必要がある。そのために,どの子の考えをどのように取り上げ,どのように生かしていくか,また,どの考えとどの考えを比較させるか,さらに,各々の解決の中にあるよさをどのように理解させるか等,その話し合いの進め方を十分に考えておかなければならない。

◎話し合い活動で大事にしたい子どもの姿
・ものごとに出合った時に,心動かしつぶやく。
・自分なりの表現で発表しようとする。
・自分が分からないということが言える。
・自分の考えを分かってもらえるよう,工夫して発表する。
・自分の考えと比べながら,友達の考えを聞く。
・多様な考えがあること知る。
・多様な考えを認め合う。
・友達のつまずきや疑問を大事にする。
・友達の考えと比べた後,自分の考えを見直す。
・よりよい考えを求めようとする。
話し合い活動を充実させるには,話し合いのできる学級が前提となる。子どもたちが互いを認め支え合う学級集団をつくることが必須である。一人一人が大事にされる学級を根底に据えて,取り組みをしていきたい。

(4) ま と め る
確かめる段階で解決した方法を言葉などでまとめさせ,「わかったこと」「不思議だなと思ったこと」「まだはっきりわからないところ」「今まで学習したこととよくにている ところ」等をノートや学習プリントに書かせることが必要である。それが子ども自身の自 己評価にもなり,次の発展の方向を見させることにもなる。また次の課題への予告とし  て「これを使ってできそうな問題はないだろうか。」というように問題づくりにまで発展さ せることもできると考えている。

[2]単元計画の工夫
主体的に算数学習に取り組む子どもの姿とはどのようなものであろうか。単元のなかのそれぞれの課題において一人一人が自分の考えを持ち,それを図や言葉などで表現し,互いの考えを出し合いながらよりよい解決を求めていくという,問題解決学習を進めていく姿である。
さらに,子ども自身が単元全体を見通し,既習・未習事項を見極めながら既習事項をもとに
未習事項を解決しようと,子ども自らが発展的に学習を進める姿であると考える。
このような子どもを育てていくためには,指導者自身が単元を見通し,子どもに評価を返しながら活動を支援していくことが求められる。また,子どもが単元を見通せるような単元を通した課題,既習事項を手がかりにしながら課題を解決していけるような課題とはどのようなものであるのか,どの子どもも自分の考えをもてるような算数的活動とはどのようなものであるのかを考えながら単元計画を工夫していくことが大切であると考える。さらに,未習事項を解決するための大きな手がかりとなる既習事項を,全ての子どもたちにとってより確かなものにするため,既習事項の習熟のあり方についても考えていきたい。

4.現教の進め方
[1]算数科を中心とした教育の研究や推進
(1)研究授業・研究協議の積み重ねを通して研究・実践を深め,日々の学習を充実させていく。
(2)子どもの書いたものをもとに,子どもの願い・考え方・反応等分析し,指導に生かす。

[2]人権教育,特別支援教育の推進
(1)特別支援の必要な児童について現教の場で話し合い,全職員が一人一人の子どもを正確に把握し,子どもの願いや悩みを受け止めながら特別支援教育を充実させる。
(2) 積極的に講演会や研修会に参加し,教職員の人権意識を高める。
(3)11月の人権月間に合わせ,人権に関する授業を行い児童の意識を高める。

[3]生活指導・道徳教育を推進し,子どもたちの生き方や感性を高める。
「湊の子ども」の時間を設け,全職員で児童の実態を把握し,指導に生かす。

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