和歌山市立 小倉小学校

教員研修

◎現職教育

1.基本的な考え方

 本校では、「現職教育」を教育目標「豊かな心情を持ち、よく考え、健康できまりある行動のできる子を育てる」の実現のため、教育課程の編成、教育活動の展開、指導の在り方などについて教職員間の共通認識を形成し、さらに、個々の教職員の指導者としての資質や能力を高めるために計画的に行う研修の場として位置づけている。

 この現職教育を企画運営する委員会は、管理職の指導監督の下、現職教育主任を中心に、教務主任と4部会(授業研究、人権教育、生活指導、特別支援教育)の主任によって構成する。

 4部会は、本校教育活動の柱として、教育目標実現のために特に重点的に取り組んでいくべき領域と考えるものである。

◎授業研究

1.研究主題

 ことばの力を育てる学習活動~国語科の実践を通して~

    サブテーマ ~求め合い、高め合い、深め合う学びの創造~

 

2.主題について

これまで本校では、学習活動の中で、子どもたちのコミュニケーション力を育てることを主眼に授業研究を進めてきた。しかしながら、コミュニケーション力の育成のためのアプローチの仕方については、統一した考え方を十分に固めることができなかったという、課題があった。

昨今、子どもを取り巻く環境が大きく変化するなかで、様々な思いや考えをもつ他者と対話をしたり、文化的伝統の中で形成されてきた豊かな言語文化を体験したりするなどの機会が減少し、言語に関する感性や知識・技能などが育ちにくくなってきていることが指摘されるようになっている。本校児童にも、このような傾向は当てはまっていると感じる場面が多々ある。

そこで、「ことばの力を育てる学習活動~国語科の実践を通して~ サブテーマ ~求め合い、高め合い、深め合う学びの創造~」という主題を定め、次のような考えで研究を進めることとする。

ここでいう「ことばの力」とは「知識と経験,論理的思考、感性・情緒等を基盤として、自らの考えを深め、他者とコミュニケーションを行うために言語を運用するのに必要な能力」であり、具体的には「話すこと・聞くこと」、「書くこと」、「読むこと」といった言語活動すべてが該当すると考える。そして、「ことばの力」を育てることは、すべての学習活動の基本となるだけでなく、豊かな心を育む上でも不可欠であると考える。

この「ことばの力」を育むために、本校では、まず国語科を足がかりとして研究を進めていくことにした。国語科の学習を通じて、「話すこと・聞くこと」や「書くこと」、「読むこと」に関する基本的な力を定着させたり、言葉の美しさやリズムを体感させたりするとともに、発達の段階に応じて、記録、要約、説明、論述といった言語活動を行う能力を培うことをめざしたい。

また、実際の単元や授業の展開に当たっては、子どもたち自身がその学習の主題に真摯に向き合い、思いや考えを発表、交流していく中で思考が高まり、深まっていくものでなくてはならない。

そのためには、子どもの心に訴えかける教材の設定が重要である。子どもが教材と対話し、共感・共鳴・驚き・憧れ・感動だけでなく、反発・反論などの反応までを含めた心の動きを誘う授業づくりをめざさなければならない。一つの授業、一つの単元が終わった時、一人の子どもや集団の変容が実感できるような学習づくりをめざしていきたい。

 

3.研究の視点

⑴ 単元の構成にあたって

サブテーマともなっている「~求め合い、高め合い、深め合う学びの創造~」を具現化するためには、子どもたちが学習材(単元・教材)にどれだけ、心を寄せることができるか、興味関心を持って学習に望めるかが問われることとなる。またそれは、指導する教員も「この学習で、この力を身につけさせたい」という確かな意思を持てているかにかかわってくる。つまり、単元や教材に対する理解と指導観の下に、単元計画・構想を練り上げることが必要なのである。

また、学年や単元によって、子どもたちにつけたい「ことばの力」は様々であるが、それぞれの学習でつけたい力をはっきりと見定めておくことも必須である。このつけたい「ことばの力」こそが、単元計画・構想の中核となるのである。

 

⑵ 授業の中で

「ことばの力」を育てるための授業研究であっても、それぞれの授業がドリル的であったり、知識技能の習得だけを目ざしたりするものではない。

一つ一つの授業のなかでは、子どもたちが意見や考えを積極的に交流し、他者の考えを採り入れたり、自らと比較したりしながら変容していくものでなくてはならない。

授業の中でのコミュニケーションの有り様については次のような視点を持って、研究をすすめなければならない。

・自分の考えや思いを他者に正しく伝えようとしているか。

・相手(他者)の心を想像したり、意図や感情を読み取ろうとしたりしているか。

・教材の中の場面、文脈、状況等を理解できているか。

・相手(他者)の意見を自分の中で咀嚼して、自らの考えを再構築しようとしているか。

しかし、このような子どもの姿を引き出すためには、授業そのものが子どもにとって魅力のあるものであることが前提となる。そのためには、次のような点に留意が必要である。

・単元や授業の初めに、その学習のめあてを子どもたちに明確に示している。

・そのめあては、子どもの興味関心を掘り起こすものである。

・そのめあては、子どもだけでなく、教員も共鳴・共感できるものである。

さらに、授業を進める中では、教師の側からは、次のような仕掛けが必要である。

・自らの発問に対する子どもの意見を、謙虚かつ誠実に受け止める。

・この子が何を伝えたいかを常に意識している。

・常に共感的なサインを送る。(相づち、表情、話し方など)

・必要に応じ、意見や発言を整理補足し、全体のものとなるよう仕向ける。

・時には、立ち止まり、切り返す発問を投げかける。ただしそれは、学習のめあてにつながるものでなければならない。

・つぶやきを見逃さず拾い上げ、全体化させる。

・学習の最後には、次につながるめあてを明確に示す。

こうした日常の取組の積み重ねが、子どもの意欲を引き出し、自信を持たせ、求め合い、高め合い、深め合う学びを創造していくと考えている。

 

⑶ 常時的な取り組み

一人一人が自分の意見や考えを的確に表出できる(アウトプット)ことによって、授業は有機的に動き出すのである。このアウトプットの能力は、児童によって個人差があると考えられる。その差を埋めていくためには、言語に関する知識を培うこと(インプット)が必要である。言語に関する知識が豊かになることによって、表現力が高まり、子どもたちの意見や考えの交流がより深まることにつながるのである。したがって、平素の学習から、言語知識のインプットを意識した学習活動を位置づけておくことが求められる。このことの具体的な手立てについては、後述する。

 

⑷ 学習の足跡の評価

どの教科、領域であっても、学習の後には子どもたちの足跡が様々な形で残されてくる。これらをどう生かし、次の学習へつなげていくかということは、子どもたちの学習意欲を持続させていくためには極めて重要である。

たとえば、感想文であれば、その一つ一つに教師の適切な評価や励ましをつけて返していく。あるいは、足跡を学級の掲示物として制作する、それを振り返り学習などで生かす、など、多くの手立てがある。

また、そこでは、子どもたちへの正の評価を持って返していき、学習したことの喜びと自らの学びに対する自信を実感させることが不可欠である。

足跡を大切にすることは、子どもたちがその学習によって変容や成長したことを、教師自身が受け止めることであり、教師自身の変容や成長にもつながるものである。

 

4.子どもたちにつけたい力

⑴話す・聞く

自らの考えや意見、思いを他者に分かりやすく伝えることはコミュニケーションの第一歩である。また、伝えたいことを順序立てて話すことは、子ども自身の考えが深まり、論理的な思考力を育てるものである。

また、他者の意見を聞く力をつけることも、コミュニケーション力の重要な要素である。他者の意見と自らの考えを比較し、考えることで、より思考力は高まっていく。

話す力と聞く力は互いにらせん的にかかわるものであり、文を書く力や思考力の育成に大きく影響していくものである。

話す力と書く力について、つけたい力は次のとおりである。

「話す力」

1 自分の考えや意見を整理し,根拠や理由を明確にした論理的な話し方ができる。

2 相手の話を受け,その内容を踏まえて自分の考えや意見を話すことができる。

3 他者に配慮した(不快感を与えない,傷つけない)話し方ができる。

4 話し合うことによって,相手との人間関係を深めることができる。

5 聞き取りやすい音声(声量・速さ・声の調子など)で話すことができる。

6 大事なところを強調したり,間の取り方を工夫したりできる。

「聞く力」

1 事実や根拠などに注意しながら,話の内容を正確に聞き取ることができる。

2 聞いた内容をメモに取ったりして,話の構成や展開を理解できる。

3 話し手が何を言いたいのかを探りながら,話を聞くことができる。

4 話し手に共感でき,言外の思いも感じ取るように聞くことができる。

5 話をしっかりと聞き取り,確認すべき情報を整理して質問できる。

 

⑵書く

本校児童は、学習を通じて教材から読み取ったこと、感じたこと、考え・意見や思いなどを正確に伝える論理的な文章を書く力に課題があると感じている。また、文を書くことに抵抗感を感じている子どもも少なくないようである。

この課題を克服するために、次のような取り組みを進め、書くことの位置づけと意識づけを図っていく。

1 生活作文など、自分の身の回りの出来事を書かせる。

2 何をどのように書いたらよいかを具体的に示して書かせる。

3 根拠、論拠を意識させて書かせる。

4 書いたものをそのままにせず、推敲を意識づける。

このような取り組みの積み重ねによって、子どもたちにつけたい書く力は次のようなものである。

1 客観的な根拠や理由に基づいて,自分の考えや意見を書くことができる。

2 読み手が理解しやすい構成を意識して,文章を書くことができる。

3 事実や根拠などを明らかにした論理的な文章を書くことができる。

4自分の気持ちなどを正確に相手に伝えられるように書くことができる。

 

⑶読む

教材文に書いてあることを正しく読み取る力は、国語だけでなく、あらゆる学習の基盤となることがらである。

各学年の発達段階に応じて、子どもたちにつけたい読む力は次の通りである。

1 論理的・説明的な文章において

・文章の構成や論理の展開に沿って,内容を的確に読み取ることができる。

・新聞や雑誌などを読んで情報を正確に理解できる。

・事実や意見等を区別して読み取ることができる。

・課題解決のために必要な情報を収集し,情報を処理するための読み方ができる。

2 文学的な文章において

・様々な描写をとらえ,内容を的確に理解できる。

・登場人物の気持ちや感情を理解し、読み取ることができる。

・比喩的、多義的、含意的な文章表現を読み味わうことができる。

・書き手の思考や心情などに迫ることができる。

 

5.研究を支える日常の取り組み

⑴読書活動

読書は、国語力を構成している「考える力」「感じる力」「想像する力」「表す力」「国語の知識等」のいずれにもかかわり、これらの力を育てる上で中核となるものである。さらに、これらの力が基盤となって、国語科以外の学習においても、学力の向上と密接に関連し、また、豊かな心の育成につながるものであると考える。

読書活動は、継続して行うことにより、子どもたちがその楽しさに気づき、自ら読書に親しむ習慣や読書力もついてくる。しかし、読書への関心や習慣が十分に培われていない児童も少なからず存在することも事実である。これらの児童に読書習慣を身に付けさせるためには、継続した読書指導が必要である。

そのため、本校では、朝の読書時間を設ける、図書室・学級文庫の整備を進めるなど、読書環境の整備と充実を図りたい。

 

⑵音読・暗唱

音読や暗唱は、言語の音声的側面の感受力を高め、日本語の特質に関する言語感覚を育てることのできる活動である。

優れた表現は、文章としての味わいだけでなく、音声化によって豊かなイメージを描かせることができたり、子どもたちの感性や情緒を豊かにしたりする。暗唱や音読をすることで、それらの持つ言葉のひびきやリズムの快さ、表現としての結晶度や美しさを体感させたい。

さらに、音声面から作品に込められた書き手の思いや日本語の持つ豊かな味わいを感じ取り、言語の音声的側面の受容力・感受力を高める効果も期待できる。

また、音読・暗唱活動を継続的に行うことは、子どもたちの話しことばや文章での表現力を知らず知らずのうちに磨き上げるものであると考える。

なお、暗唱教材の選定に当たっては、児童の発達段階に応じて、意味的にも受容可能なものであることが望ましいが、難しい表現であっても、その意味内容を事前指導することによって設定は可能であると考える。(古典、詩歌、歌詞等)

 

⑶視写

視写は、決して単純な手作業ではない。いうならば、「手で読む」学習活動と考えられる。文章を正しく書き写すため、子ども達は、一文一文を丹念に読むことになる。そのことを通して、表現の技法、表記のルールが身につき、文章表現力を高める効果や、言葉に対する意識の高まりを育成ができる。

また、書き写す活動を続けることで、書くことへの抵抗感を減らし、漢字やかなづかいをはじめとした語彙力を高めるだけでなく、読解力の向上にもつながっていく。本校児童は、文章で思いや考えを表現したり、物事の根拠について論理的に表現したりする力に課題が認められているが、視写に取り組むことで、これらの課題解決の効果が期待できる。

しかし、子どもたちが継続的に視写活動に取り組めるためには、子どもの発達段階に応じた、適切な教材選定が必要である。単元計画を進める中で、教科書、文学教材(絵本・詩歌を含む)等から教材選定をし、適切に位置づけていきたい。

 

⑷言葉の知識(漢字、ことわざ・慣用句、ローマ字)

言語は知的活動の基盤となるものであり、国語科だけでなく、各学年の学習内容を確実に習得するためには、発達段階に即した言語の知識が必須である。

少なくとも、学年配当の漢字については読み書きできる力をつけさせたい。

また、ことわざ・慣用句などの日本語の表現を豊かにしているものについての知識を身につけさせることや、3学年以上では、国際化社会の中で、日本語と外国語をつなぐツールとしてのローマ字の習得も重要である。

これらの力は、平素から継続的・計画的な指導を進めることにより、身につくものであるため、学習の中の位置づけや教室環境の整備など、常に子どもたちがこれらに接することができる環境づくりに努めたい。

 

 

 

 

 

 

 

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